【無線LAN技術】QAMとは。

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はじめに

こんにちは。今回はタイトルの通り、近年の無線LANでは欠かせないQAMという技術について書かせていただきます。

これから無線LANの技術について長期に渡って一つずつ書かせていただこうと思っています。無線LANって思っていたよりも高度で複雑な技術が詰まっているため、かなり面白いです。
本記事は無線LAN特集の記念すべき第一回目の記事となります。それではよろしくお願いいたします、何卒!

概要

QAMはQuadrature Amplitude Modulationの略で、日本語では直角位相振幅変調と訳します。
訳を見ても意味はあまりピンとは来ないかもしれません。

有線LANと比べて無線LANの大きなデメリットの一つとして、通信速度が遅いことが挙げられます。そのため、無線LANの通信速度向上のため、これまでに様々な技術が考案されてきました。アンテナの数を増やしたり、電波の数を増やしたり、1つの電波で搬送させる情報量を増やしたり、などです。
その中でもQAMは最後の1つあたりの電波にのせられる情報量を増やす技術となります。

それではどのように実現しているのか、具体的な仕組みを見ていきましょう。

仕組み

いきなりQAMの仕組みについて語るのはやめました!
QAMが策定されるまでに考案されてきた土台となる変調方式がいくつかあるので、それらを順に追いながら見ていきましょう。

OOK

無線LANを利用する際、端末から無線APの間は搬送波と呼ばれる電波によって通信されています。つまり、情報を一度波に変換して、空気中を移動して辿り着いた先で再度情報に変換されています。そのため、伝えたい情報によって波を変化させる必要があります。

ネットワーク機器から送られる情報は0または1の2通りであるため、まず一番簡単に思いつくのが、0ならば波を送らず、1ならば波を送る、というものです。

この方法ならば波を情報に変換する作業がかなり単純になります。が、だいたいデメリットはわかると思いますが、1つの波で1bitしか送信できないためこの方法では伝送効率が悪すぎます。。例えば1GBのデータを送るためには、

\[1024×1024×1024≒10^9\]

の搬送波を送る必要があります。こんなに大量の波を送り、届いたら再度bitに変換を行うので通信速度も遅くなるんじゃないでしょうか。
またこの方法では0の送信が続けばずっと波を送らないことになるため、送信が途切れたのか、はたまた0の情報を送っているのかが判別できません。そのためこの方法は実用性がありません。ちなみにこの方法はOOK(On Off Keying)と呼びます。

PSK

次は1つの波に複数の情報を織り込めるPSK(Phase Shift Keying)の紹介です。
高校の数学や物理で波の方程式を習ったのは覚えていますか??

\[y = A\sin 2\pi (\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda })\]

こんな感じのやつです(笑)
何が言いたいかというと、波の式はいくつかの要素で決定されているということです。それぞれの変数が変化することで異なる形状の波になります。
PSKはその中でも位相を変化させることで波の種類を変えているわけです。例えば、以下の2つの波を使い分けることで波の情報量を増やすことができます。

さらに位相を細かく動かすことも可能です。上図では\(\pi \)ずつ位相をずらしていましたが、次は\(\pi /2\)ずつずらしてみましょう。

おわかりでしょうか。
この場合、波を4種類に分類することができるため、例えば図の左上の波を受信した場合、(0, 0)に変換するなど、事前に決めておけば上図の通り、一つの波に2bitの情報をもたせることができます。
これだけでさっきのOOKと比べると倍の情報量を載せることができるようになりましたね。

この位相のズレは一般的に円を用いて表されます。上図のように波を4種類に分けた場合、位相は\(\pi /2\)ずつズレているので円で表すと以下のようになります。

この調子で\(4/\pi \)ずつずらすことで8種類の波、\(8/\pi \)ずつずらすことで16種類の波、という風に際限無く細かく区別していけば1つの波に対して限りなく多くの情報量をもたせることが可能となります。

あれ、そしたら波を1つ送るだけですべての情報を送信できるってことになっちゃいますね。まぁもちろんこの世の中、そんなに簡単にはうまくいきません。
理論上は可能ですが、それを実装するのはかなり難しくなります。例えば\(2^8=256\)種類の波に分類した場合、1つ1つの波の位相に差がほとんど無いため、受信側が分類することが技術的にかなり難しくなります。
電波で送るので送っている途中で波の位相の微小な変化とかもきっとあるのでしょう。位相に差がない場合、それに対して誤りを検知することも難しいのではないでしょうか。
その割には\(256=2^8\)なので、1つの波には8bitしかもたせることができません。技術的にかなり難しいことをしている割には、その見返りがすくないんですね。

そこで人間はPSKでさらに細かく位相を分けるのではなく、より効率よく波を区別する方法を考えました。それがPSKを応用したQAMとなります。

QAM

PSKでは位相を変化させることで、搬送波を区別していました。しかし位相をさらに細かく変化させることは効率が悪いです。それでは一体どうやって区別するのがよいでしょうか。

先程、波の式を書きました。

\[y = A\sin 2\pi (\frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda })\]

波の形状を決定する要素は他にもありましたよね。QAMでは式中の\(A\)、つまり振幅を変化させることでさらに区別します!
それではPSKで4種類に区別した波を、さらに振幅を(小、中、大、極大)4種類に変化させてみましょう。この場合、以下の16種類に分類することができます。

\(2^4 = 16\)種類なので、これだけで4bitの情報をもたせることができます。
PSKでは位相をかなり細かく分けていたため受信側の判別が難しいと話しましたが、QAMでは振幅に分散したおかげで、位相と振幅それぞれが細かく分けすぎなくなり、受信側の判別も容易になりました。上図の場合、位相は4種類、振幅も4種類なので簡単に波の種類を判別できます。

現在、主流として用いられている無線LANの規格である802.11acではQAMを用いて256種類、2020年7月の段階では最新の規格である802.11axでは1024種類の搬送波に区別しているため、それぞれ8bit, 10bitの情報をもたせることで高速化を図っています。
少し前までQAMの限界は256QAMだと言われていたのに、802.11ax(wifi-6)はその限界を突破しちゃったんですね。技術進歩の速さには驚くばかりです。
今後はさらに技術が発展すると推測されるため、QAMも2048種類、4096種類と増えていくことでしょう。もしくは、QAMで言う振幅のような、何か新しい要素を加えて更に効率よく情報量を増やすのでしょうか。どうなるかはわかりませんが、今後の技術動向には期待です。

終わりに

今回解説したQAMは1つの搬送波に対してどれだけ多くの情報をもたせることができるかという点にフォーカスした技術です。
冒頭でも説明した通り、QAMは無線の高速化技術の1つであって、OFDMAやMU-MIMOといった技術も組み合わせることで更なる高速化を図ることができます。
次回はそれらの解説もしていこうと思っています!乞うご期待を!!

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